野川は、古多摩川が約 3 万年前に作っ
た比高10 ~15 mの国分寺崖線に露頭する
武蔵野礫層からの湧水によって涵養され
ている(図8参照)。大岡昇平は『武蔵
野夫人』で、「「ハケ」とは「鼻」の訛だと
か「端」の意味だとかいう人もあるが、
どうやら「ハケ」はすなわち、「峡」にほ
かならず、(一部省略)道に流れ出る水
を遡って斜面深く喰い込んだ、一つの窪地を指すものらしい。」と説明している。
野川は国分寺市東恋ヶ窪の日立製作所中央研究所敷地内にある湧水を源泉とし、途中
「ハケ」からの流れを合わせ国分寺市、小金井市、調布市、世田谷区を流下し、二子玉川
で多摩川と合流する延長20.2 kmの一級河川である。現在、日立製作所敷地内にある野川
の源泉は、環境保護のため一般には開放されていないので見ることはできない。野川は
日立製作所内の池を流れ出ると南へ向かい、JR中央線の下をくぐり元町用水と合流す
る。元町用水は全長800 mで、「真姿
ますがた
の池」をはじめとする4カ所の湧水を集めて流れて
いる。この湧水群は1日1,000m
3
にも達する湧水量があり、都内最高レベルの清泉である。
「真姿の池」を中心とするこの湧水群は、東京市街地にある湧水としてはただ一箇所、環
境庁指定の「名水百選」に選出されていて、容器持参で水汲みに訪れる人も多く(写真
4)、手を入れるとあまりの冷たさに思わず口に入れてしまう。しかし、時期によっては
大腸菌が検出されることもあるようで、湧き出し口には「煮沸して飲むように・・・」との
注意書きがある。湧き出し口のすぐ横に
は小さな祠が祭られた「真姿の池」があ
り、「嘉祥
かしょう
元年(西暦 848 年)重い病気
を病んだ絶世の美女玉造
たまつくり
の小町が武蔵国
分寺を訪れ、薬師如来に祈り続けたとこ
ろ21 日目に一人の童子が突然現れ、『こ
の池水にて洗うべし』と云って姿を消し
た。小町は言われるとおりにしたところ
7日でもとの美しい姿になった。このこ
とから、以後里人はこの池を「真姿の池」
と呼ぶようになった。」(『国分寺略縁記』
より)という伝説が残っている。
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写真4 「真姿の池」の湧水
図8 国分寺崖線付近の断面図
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