下鉄(または小断面地下鉄)方式を採用し、特に台車の小型化による車両高さの低減に
よって図11
31)
のようにトンネルの掘削断面積を従来の半分とした。同様のシステムは大
阪市営の長堀鶴見緑地線でも採用され、新しい地下鉄のあり方として注目を集めている。
このほか、従来の都市鉄道を補完する交通手段としてモノレールや新交通システムの
建設も本格化し、1964 (昭和39 )年に東京モノレール(跨座式)が開業したのをはじめ、
1988 (昭和63 )年には千葉都市モノレール(懸垂式)、1998 (平成10 )年には多摩都市モ
ノレール(跨座式)がそれぞれ開業を果たした。また、新交通システムとしては、1983
(昭和58 )年に埼玉新都市交通が開業したほか、1995 (平成7)年にゆりかもめ(東京臨
海新交通)が開業し、ウォーターフロントへの新しい足として活躍している。モノレー
ルや新交通システムは、鉄道事業法施行規則の中で鉄道の種類のひとつとして位置付け
られているが、他の鉄道に乗り入れることができないという欠点があるため、主として
空港や遊園地、団地などの起終点がある程度明確な地域のアクセス手段として用いられ
ている。また、路面電車を先端技術でリニューアルし、バリアフリー対策などの利便性
に優れた交通機関として甦らせたLRT (Light Rail Transit )も注目を集めており、ヨーロ
ッパやアメリカの諸都市では LRT を核とした都市開発がさかんに行われている。近年、
東京急行世田谷線でも超低床式LRT 車両が登場し、環境や人にやさしい交通機関である
路面電車の復権が都市再生の鍵のひとつとなることが期待されている
32)
。
このように首都圏の鉄道網は、過去130 年間にわたる長い歴史の中で育まれてきた重要
なインフラストラクチャーであり、地球環境に対する負荷が少なく、渋滞に関係のない
定時制に優れた交通手段として、21 世紀に向けてその役割はますます重要となっている
と言えよう。
─17─
図11 リニア地下鉄と一般の地下鉄におけるトンネル断面の比較
31)