(1)JR武蔵野線新小平駅の浮き上がり
38)39)
JR 武蔵野線は東京の外環状線として1966 (昭和41 )年に着手され、1976 (昭和51 )年
に完成した。新小平駅は武蔵野台地に U 型 RC 構造の半地下式の駅として建設された。
1991 (平成3)年10 月に日本列島を襲った台風21 号の影響による降雨は10 月6 日から11 日
まで連続雨量227mm に達し、さらに先立つ8月から9月末までの累積雨量も724mm と多
かったために、周辺の地下水位が著しく上昇し、11 日23 時15 分に駅部のU型よう壁が延長
120m にわたり最大1.3 m隆起した。このため、よう壁の伸縮目地の上部に最大70cm の開
口を生じ、大量の地下水と土砂の流入により駅部は冠水するに至った(写真4、写真5
38)
)。
この災害により、武蔵野線は2ヶ月間不通となり、周辺利用客、貨物輸送に多大な影響
を与えたことは周知のとおりである。なお、この2ヶ月間に災害箇所の発生原因調査と
十分な対策工が講じられている。
新小平駅は標高76 ~78 mの平坦な武蔵野台地に掘り割って建設され、周辺の地質は地
表から表土の下に3~5mの関東ローム層(Lm )、火山灰質粘土層(Dt 3)、武蔵野礫層
(Dg
2
)、粘土層(Dm
3
)、東京礫層(Dg
2
)、シルト層(Tm)、細砂(Ts )が続く。図15 に示
すように、駅部のU 型よう壁の底面は、武蔵野礫層のほぼ中央部にある。周辺地盤の常時
の地下水位は武蔵野礫層中をゆるやかに東方に流れており、台地末端部や谷頭で湧泉や
池を形成する。この地下水位は降雨の影響により大きく変動することが、新小平駅の東
方約1km の位置での長期水位観測結果から分かり、それによれば通常冬期の渇水期には
地表下-10 ~12mである水位が、梅雨期から台風時期には6m程度上昇する。これに対し、
災害発生時には同観測位置で渇水期より9m 高い状況であったことが明らかとなった
40)
。
この状態は約70 年に1回の発生確率に当たると試算されている。
─21─
図15 新小平駅周辺の地質断面図(線路横断方向)
39)