4-3 地下駅やトンネルを作る
深部地下鉄道は、首都圏では主に東京層群や上総層群中を通過することになる。前述
のように、これらの地層は一般に未固結で地下水頭も高く、かつ都市中枢部の地下の施
工となるため、トンネルの工法としてはシールド工法が標準的な工法と考えられる。し
かし、固結度が高く透水性の小さい粘性土質の地層中や、延長の短いトンネル、偏断面、
拡幅施工箇所等では十分な補助工法を駆使することにより、山岳工法の採用を検討する
ことも必要となる。例えば、横浜市営地下鉄では、固結度が高く、透水性の小さいシル
ト、粘土層(土丹)からなる上総層群を駅部も含めてNATM(New Austrian Tunnelling
Method )で施工している。
シールド工法は従来の軟弱な地山条件からより硬い地山に、NATM は都市部での施工
例の増加や補助工法の技術開発に伴い、より軟弱な地山にそれぞれ適用範囲を広げつつ
ある(表1、図17 )
44)
。なお、地盤の条件に伴う工法選定という点では、NATMの適用範
囲は現状では一軸圧縮強度で0.1Mpa 、変形係数で10Mpa が、その適用の実績から見た下
限値といえそうである
45)
。
一方、シールド工法は多くの軟弱な未固結地盤中や駅部大断面部で用いることとなる。
写真6に3心円MF(Multi-Face) シールドの基本構造を示す。これは、駅部トンネルの構
築方法として、従来のシールド工法による地下駅の建設方法に代わって、複数のシール
ド断面を結合させたMF シールド工法を用いて安全かつ経済的な断面の確保を目的とした
ものである。この工法はすでにJR 京葉線京橋で2心円MF シールドが施工され、その有効
性は確認されるとともに、3心円を含む様々な掘削断面形状に対応した工法が使用され、
あるいは提案されている
46)47)
。
─26─
写真6 3心円MF (Multi-Face)シールドの基本構造
46)