4-4 環境問題を考える
トンネル工事に係わる周辺環境問題は、深部地下開発に限らず、常に細心の注意を必
要とする問題である。特に、都市部では、社会に与える影響が大きいため、発生からの
対処ではなく様々な観点からこれを予測し、未然に防ぐことが最大の課題である。以下
に大深度地下利用に伴う主な環境影響を考えてみる。
(1)構造物による地下水流動阻害
滞水層内に構造物を設置した場合、地下水流動を阻害し、流動の遮断及び地下水位の低
下といった現象が生ずる可能性がある。これは、トンネル等の線状構造物が滞水層をかな
りの割合で遮水する場合や、構造物が輻輳する駅部等で生じやすいと考えられる。前述の
3-3(1)に示した新小平駅の災害事例は類似の原因から発生したものと考えられる。
(2)地下水の低下
大深度地下鉄道は原則として防水構造が原則となる。しかしながら、施工中や供用後
の部分的な漏水の可能性は否定できない。この問題については前述の地下水流動支障の
問題とともに、数値解析手法を用いたシミュレーション等による十分な検討が必要であ
り、水位の変動を様々なパラメータの組み合せにより予測する必要がある。さらに、地
下水の流動や水位変動については、計画段階の調査から施工中、供用後に至る帯水層別
の間隙水圧測定等のモニタリング手法の基本的な考え方の整備が必要である。
また、地下水位の低下は地盤沈下、地下水利用障害、礫層の酸化・酸欠層の発生など
の問題を伴う場合がある点で注意が必要である。
(3)地下水質の変化
地下水質の変化は、工事に伴う薬液注入等工事に起因して生じる可能性がある。大深
度においては、地下水低下を最小限に止めることが必要となり、結果として高水圧中で
の止水対策が重要になる。この薬液注入工法は、施工の状況、地質・地下水条件によっ
ては周辺の地下水の水質に影響を与え、地下水利用障害等の影響を引き起こす原因とも
なる可能性がある。さらに、工事中や供用後の問題として地盤中の酸素が漏出し、地盤
中の硫化物などとの化学反応によって硫酸が生ずる可能性があり、地中構造物や埋設物
の腐食が促進されることも考えられる。
(4)その他の影響
大深度地下利用による環境影響としては、地盤環境に関するものばかりでなく、地上
の環境に関するものもある。主なものを挙げると大気汚染、騒音・振動、水質汚濁・自
然環境の改変などである。このほか、建設残土の水域、山間部への不適切な投棄が水質
汚濁・自然環境の改変につながる可能性もある。また、大深度地下鉄道では、換気に関
連した問題についても考える必要がある。
以上、周辺環境への影響は一旦生ずると広範囲に及び、その改善には多大な労力と経費
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