酒造りにとって重要な水は、自前の水であり、
昭和16 年(1941 )に地下130 mもの深い井戸を掘
り、その地下水を仕込み水として使っている。地
下水は上総層群舎人層の砂や礫層から採取してい
るものと考えられ、酒造りの最盛期には約8t/
日の地下水を使用している。荒川水系の浦和水脈
からの良質な伏流水で、水質は硬質という。
この水は多くの人びとに好まれていて、蔵の前
の街道筋に給水場を設けて無料で提供していた
が、過去2回ほど心ない人たちによって蛇口が壊
されてしまい、現在は酒蔵のなかにある。
<お酒>
名水のガイドブックによく取り上げられる豊富な井戸水と山田錦(兵庫県)、五百万石
(新潟県)、美山錦(長野県)などの酒造好適米に支えられて「丸眞正宗」はつくられて
いる。全体的に「すっきりした味わい」、「やわらかなのどごし」といわれる酒は、本格
「寒造り」のたまもので飽きのこない酒として定評がある。吟醸、純米、生酒などたくさ
んの種類があるが、吟醸酒「こやま」は、この蔵元だけでしか買えない。日本酒の生産
量は1.8 r 瓶換算で約20 万本/年である。
酒造工程は小山光三社長に説明して頂き、「丸眞正宗」をつくるうえで、最も大切なも
のは「水」であることを強調されていた。井戸には「酒造用深井戸の変遷」という説明
があり、神棚もある。小山光三社長の「水」に対する思い入れがよくわかる。また、蔵
の裏側には酒の神様の「松尾神社」が祀られている。
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写真6 深さ130mの深井戸
写真7 原酒を貯蔵中のタンク 写真8 お酒を詰める機械