した「山廃もと」、同時期に乳酸を添加して短時間に酒母を増殖させる「速醸もと」など が考案された。 しかし、現代にいたる戦前までは酒造りの途中で腐ったり、貯蔵中に腐敗(火落ち) することも多かった。酒造の夢である四季醸造が実現したのは、現代の先端技術を駆使 して初めて確立された。 飲酒の習慣は古代から行われていたが、酒造技術の制約などから主に神祭事や冠婚葬 祭・社交儀礼のような特殊な場合の飲料として用いられ、酔いの興奮により同一目的の 仲間意識にかりたて結合させる意向を含み、この意味から飲酒は共同で行うのが正式の ものとされてきた。個人的な飲酒の欲求は節会 せちえ 礼にともなう無礼講や、神祭後の穏座・ なおらい酒などの型で共同飲酒のわく内で特殊な形をとって満たされていた。この傾向 は江戸時代に銘々杯が用いられるようになって、ついに儀礼的な共同飲酒を逆に形式化 させるに至った。近世、茶屋酒による交際の風習が普及し、飲酒の機会が増すとともに、 従来は下賤のふうとされていたひとり酒をたしなむことも広く行われるようになった。 明治時代になって造酒に課税せられて、自家醸造は禁止されたが、製造技術の進歩によ り酒はいっそう美味となった。 <お酒の種類と製法> お酒はその製法を工夫することで、種類を増やし発達してきた。その製法は大きく分 けて発酵法(醸造酒)、蒸留法(蒸留酒)、混成法(混成酒)がある。 2 写真1 酒造のシンボル「酒 林 さかばやし 1 (杉玉、酒葉ともいう。新酒販売中の意 味、今年もよい酒ができますようにと蔵 人たちの祈りが込められている。) 図1 酒造りの絵図 1