4.火山ガスの状況 4-1.火山ガスとは 火山ガスとは、地中のマグマ中に溶存する揮発性成分がマグマの上昇などで圧力解放 されることにより気体化し、地表に噴出したもので、多くの成分が含まれている。火山 ガスの化学組成はマグマの性質やマグマ内の圧力・温度変化によって異なるが、主な成 分は水蒸気(H O)で全体の約90 %以上 を占め、その他、二酸化硫黄(SO )、 硫化水素(H S)、二酸化炭素(CO )、 フッ化水素(HF)、塩化水素(HCl) など人体に有害なガスを多く含むほか、ヘ リウム(He)、水素(H)、窒素(N )、 メタン(CH )、アルゴン(Ar)、一酸 化炭素(CO)などのガスも少量含まれる (図 18 )。火山ガスの化学組成と温度の一 般的な関係を表8に示す。表8によれば、 火山ガスの温度が高い(火山活動が活発) とSO 、HClの割合が多く、温度が低 くなる(火山活動が沈静化)に従いSO HClの割合は少なくなるのに対し、 Sの割合が多くなる特徴が見られる。 気象庁によると、日本国内には86 の活火山(北方領土及び海底火山を除くと71 )があ り、そのうち57 の火山・地域で火山ガスが噴出している。これは活火山の約7割で火山 ガスが噴出していることになり、このうち11 の火山・地域で1950 年以来48 人の方が亡 くなられている。 火山ガスの中で有毒なものとしては、フッ化水素(HF)、塩化水素(HCl)、二酸 化硫黄(SO )、硫化水素(H S)、二酸化炭素(CO )、一酸化炭素(CO)があ る。各ガスの濃度と毒性の関係を表9に示す。 23 噴煙  一酸化炭素  二酸化炭素  二酸化硫黄  水蒸気  硫化水素  フッ化水素  ヘリウム  塩化水素  酸素  水素  塩素  硫黄  フッ素  窒素  炭素  ヘリウム  アルゴン  揮発性成分  18 火山ガス発生のメカニズム 表8 火山ガスの温度による分類 16 温度範囲 ガス組成組み合わせ(水を除く) Ⅰ 1200 °C ~ 800 °C HCl, SO 2 , CO 2 , H 2 H 2 S, N 2 HCl, SO 2 , H 2 S, CO 2 N 2 , H 2 800 °C ~ 100 °C SO 2 , H 2 S, CO 2 N 2 HCl, H 2 100 °C ~ 60 °C H 2 S, CO 2 N 2 SO 2 H 2 Ⅳ  60 °C 以下 CO 2 N 2 H 2 S