6.まとめ 6-1 火山噴火予知 <火山噴火予知の動向> 火山噴火の前兆現象は、マグマの性状やその供給メカニズムにより異なることから、 その噴火予知は難しいと言われている。噴火予知は、史実による予測と観測による予測 の2つに分けられる。 史実による予測は、噴火が周期的に起きることを利用して予知を行う手法である。し かし、三宅島のように周期が20 年程度の火山から長いものになると休止期間が数百年に もなるものまで、火山ごとに千差万別で、火山が活動時期に入っている程度の予測はで きるものの、いつ噴火するかというような詳細な予知はできない。 観測による噴火予知は、GPS(汎地球測位システム)あるいは傾斜計や体積ひずみ 計で地盤の変形を観測する方法がある。これは地下深くから上昇してきたマグマにより、 火山山体が内側から押されて膨らむ(変形する)状況を観測する方法である。また、マ グマが上昇する際に発生する火山性地震を観測することで、地下のマグマの動きを把握 して予知する方法もある。観測による予測も火山ごとにその前兆現象に特徴があり、噴 火周期が短い火山においては何回か噴火前の前兆現象を観測できていることから、ある 程度詳細な予知ができるようになっている火山もあるが、噴火周期の長い火山では、そ の特徴を解明できていないのが現状である。 このほかにも噴火予知の方法として、地磁気や重力の変化及び地熱の変化(火口の温 度変化)などいろいろな研究が進められているが、火山によって噴火の形態が異なると その前兆現象の特徴も異なるため、画一的な予知手段は見いだされていない。例えば、 溶岩を吹き出す火山では火山性地震が予知の重要な項目であるのに対し、水蒸気爆発を 起こす火山では、地下のマグマと地下水が接することにより爆発が生じるため、地震活 動による予知は難しいが、噴出する火山ガス成分の変化により噴火を予知した例もある。 しかし、火山ごとにその特性が異なることや理論を実証するためのデータを採取する噴 火がたまにしか起きないことから、思うように研究は進んでいないのが現状である。 三宅島は前兆現象から噴火までの時間が非常に短い火山として知られており(前駆的 地震・鳴動活動開始から2~3時間で噴火に至ることが多い)、今回の三宅島の噴火も 前兆現象から噴火に至るまで、約半日程度と非常に短く、三宅島は噴火予知が難しい火 山に属していると言える。しかし、三宅島は噴火周期が短く、その周期がほぼ一定して いることから今回の噴火も予測はされていたが、今回の噴火のような溶岩流を伴わない 山頂噴火の歴史記録はなく、さらに火山ガスが世界的に見ても観測例がない程、多量に 噴出し続けているなど、噴火の終息については誰も予知ができない状況である。 32