1 1.はじめに 食卓をにぎわす魚が捕れ、渚で遊び、気持ちを癒してくれる海。だれもが身近に感じ ている海をテーマに今回の技術ノートは話を進めていきたい。 東京に関わりのある人にとって、東京湾は非常に身近な存在であるが、その海底には 何万年も前に川が流れ、その川が刻んだ谷の跡があることを知る人は少ないと思う(図 1参照)。 本書では、このような東京湾の成り立ちや地質、埋立て等に関する東京湾の変遷やそ れに伴う生態系の変化、東京港の未来像など、東京湾について広く紹介したい。 図中緑の部分は陸地を表し、茶色の部分は海底地形を表す。 なお、陸地部の地形の凹凸は表現していない。 (㈶日本水路協会海洋情報センターの海底地形データを参考に作成) 1-1 東京湾の形成 昔から地球は氷河期と間氷期(氷河期と氷河期の間の暖かい期間、現在はこの間氷期 に当たる)を繰り返してきた。氷河期には地球は冷たくなり、両極(北極と南極)およ び氷河の氷が厚くなるため、水分が氷となって地表に留まり、その分海水面は低くなる。 図1 東京湾の海底地形 横須賀駅 横浜駅 川崎駅 東京駅 船橋駅 木更津駅 0m -100m -200m -300m -700m -600m -500m -400m 10km 20km 30km 40km 50km 0km 60km 70km 古東京川