2 反対に間氷期には地球全体が暖かくなるため、両極等の氷が溶け出し、海水面が高くな る。このような気候変化に伴い、海水面が上昇(海進)したり、下降(海退)したりす る現象が発生する。これは、数万年に渡る期間で発生するため、地質の堆積環境にも大 きな影響を与える。 東京湾の基盤を形成している上 かずさ 総層群と呼ばれ る砂と粘土からなる地層は、約200~60万年前 に堆積したものである。その後海進・海退を繰り 返しながら江戸川層(60~20万年前)が堆積した。 図2a:12.5万年前頃、関東平野北東部には、 古東京湾と呼ばれる広大な浅い海が広がってい た。この頃一時的な海退時に、上総層群・江戸川 層を河川が削り込んで作った谷地形に、その後の 海進時に堆積したのが東京層である(20 ~ 10万 年前)。また、ほぼ同時期に東京西域を形成する 武蔵野台地が、富士・箱根などの火山からの噴出 物(火山灰等)により形作られた(10 ~ 8万年前)。 図2b:埋没谷の1つである古東京谷は、約2 万年前の海退時に古東京川が古い地層を削って形 成されたもので、その後小さな海進に伴いその谷 底の一部は埋められた(七号地層)。 図2c:縄文時代初期(約7千年前)の海進時に は、海面が現在の海水面より約3 ~ 5m高くなり、 関東地方の奥(利根川流域の茨城県古河市の奥) まで海が入り込み、現在の東京低地(東京の沿岸 部で平坦地をなす地域)と呼ばれる地域に厚く新 しい地層(沖積層)が堆積した。この時堆積した のが、有楽町層(上部層と下部層に分けられ、上 部層は砂質土主体、下部層は粘性土主体)と呼ば れる地層である。 図2d:このようにして、東京湾の地質・地形(地 下に隠れている地形を含めて)は形成されてきた。 図2a:12.5万年前 図2 関東地方の海進・海退による地形の変遷 1) (赤線は現在の海岸線を示す。) (「日本の自然4 日本の平野と海岸」:貝塚爽平他 (岩波書店)、に加筆) 図2b:2万年前 図2c:7千年前 図2d:現在