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2.埋立てと海岸線の変遷
2-1 東京湾沿岸の埋立ての変遷
東京湾沿岸の埋立ては、江戸時代から現在まで盛んに行われてきている。埋立て地は
港用地や運河、埠頭など様々な用途に利用されており、現在もその拡張工事が進行して
いる。中でも東京港、横浜港、千葉港など、主要港部分がその対象として、大きな変貌
を遂げている。東京湾全体の埋立て時代分類を、衛星写真と対比して次図に示す。これ
らの図によると、埋立てによる改変に伴い、かつての海岸線の面影はほとんど無いこと
が判る。
古くから東京湾では、8世紀中ごろまでの相模―上総―下総―常陸のルートを反映し
たホラ貝の喧嘩、馳水伝説(走水)、巨人伝説などの逸話が語り継がれてきている。近
世では横須賀-葉山間の運河構想(計画倒れ)、あるいは人工島が検討されるなど、東
京湾は話題に事欠かない貴重な湾といえる。
明治時代以降の東京湾は、急激な変化を遂げた横浜港や東京湊のお台場、東京湾口の
第1~3海堡の建設、工業地帯として発達した京浜・京葉地区など、工業、軍事目的の
埋立て地が急増してきた。しかし、実際には埋立て地の急増に伴う弊害(漁業の衰退な
ど)や、一部の環境問題も指摘されていて、今後の埋立て事業は、自然との共生・共存
を念頭においた事業計画が重要な課題になってきている。
図5 東京湾衛星写真(破線で旧海岸線加筆)と埋立て変遷図
3)
(「東京湾の地形・地質と水」:貝塚爽平(築地書館)、から引用)