26 4-2 小河内ダム 小河内ダムの建設地は、多摩川の上流部の様々 な候補地の中で、断層のない硬質砂岩が分布して いる水根地区に決定した。昭和13年に工事は着工 されたが、戦争で一時中断している。その後、昭 和23年に再開され、945世帯の移転と、87名の貴 い犠牲のもと、昭和32年11月に竣工した。総工 費約150億円の重力式コンクリートダムである。 東京都水道歴史館で紹介している当時の記録映 画では、3箇所の候補の中で地形的な特徴、岩盤 の状態、あるいは基地となる下流部の氷川からの 交通手段などが検討され、最終的には水根地区が 硬質砂岩の支配的な分布や断層がないなどの地質 的な利点でダム建設地に決定されたとされている。 ダムサイトは、重力式のダムを支える上に、水 の漏水を極度に嫌うため、新鮮な岩盤まで掘り下 げる必要があり、耐力、浸透量の確認が十分に行 なわれた。また、掘削した岩ずりは、コンクリー ト骨材として有効利用されている。 小河内ダムの仕様 堤体高さ149m、堤頂長353m、堤頂幅12.6m 有効貯水量185,400,000m 3 本ダムは、季節により渇水化する多摩川の流量 の調節が主な目的とされ、利根川水系の渇水期に は放流量を増やすなど重要な役割を担っている。 昭和55年には第2号取水施設が完成し、小作堰 とともに渇水時の放流能力の増強に役立っている (図22参照)。 写真19にダム建設前から完成までの変遷を示す。 次頁にはダム周辺の鳥瞰図、ダムの構造図および地質図を示した。ダムサイトの岩盤 は、全体としてNS-WEの走向を持ち開口亀裂が多いが、硬質砂岩が主体で粘板岩の薄 層が分布するものである。地質的には四万十帯 の小河内層群に分類される中生代白亜 紀の岩盤である。 *四万十帯:四国の四万十川由来の地帯。陸上付加体で小河内層群、小仏層群よりなる。 写真19 小河内ダムの変遷 12)