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4-2 小河内ダム
小河内ダムの建設地は、多摩川の上流部の様々
な候補地の中で、断層のない硬質砂岩が分布して
いる水根地区に決定した。昭和13年に工事は着工
されたが、戦争で一時中断している。その後、昭
和23年に再開され、945世帯の移転と、87名の貴
い犠牲のもと、昭和32年11月に竣工した。総工
費約150億円の重力式コンクリートダムである。
東京都水道歴史館で紹介している当時の記録映
画では、3箇所の候補の中で地形的な特徴、岩盤
の状態、あるいは基地となる下流部の氷川からの
交通手段などが検討され、最終的には水根地区が
硬質砂岩の支配的な分布や断層がないなどの地質
的な利点でダム建設地に決定されたとされている。
ダムサイトは、重力式のダムを支える上に、水
の漏水を極度に嫌うため、新鮮な岩盤まで掘り下
げる必要があり、耐力、浸透量の確認が十分に行
なわれた。また、掘削した岩ずりは、コンクリー
ト骨材として有効利用されている。
小河内ダムの仕様
堤体高さ149m、堤頂長353m、堤頂幅12.6m
有効貯水量185,400,000m
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本ダムは、季節により渇水化する多摩川の流量
の調節が主な目的とされ、利根川水系の渇水期に
は放流量を増やすなど重要な役割を担っている。
昭和55年には第2号取水施設が完成し、小作堰
とともに渇水時の放流能力の増強に役立っている
(図22参照)。
写真19にダム建設前から完成までの変遷を示す。
次頁にはダム周辺の鳥瞰図、ダムの構造図および地質図を示した。ダムサイトの岩盤
は、全体としてNS-WEの走向を持ち開口亀裂が多いが、硬質砂岩が主体で粘板岩の薄
層が分布するものである。地質的には四万十帯
*
の小河内層群に分類される中生代白亜
紀の岩盤である。
*四万十帯:四国の四万十川由来の地帯。陸上付加体で小河内層群、小仏層群よりなる。
写真19 小河内ダムの変遷
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