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(2)多摩川流域の古墳
多摩川流域には多くの古墳が分布す
る。都市化と伴に破棄されたものもある
が多摩川台公園(大田区田園調布1丁目
63番)を中心に、現在でも見学できる
古墳が残っており、都心にあって貴重な
存在となっている。
多摩川下流沿岸の大田区から世田谷
区にかけて、荏原(台)古墳群が形成さ
れていて、周辺を治めた首長達の墓地で
あったと考えられている。さらに、「日
本書紀」巻18、安閑(あんかん)天皇
元年(534)の条にみられる「武蔵の国
造の乱」において、大和政権と結んだ“笠
原直使主”(かさはらのあたいおみ:埼
玉県さきたま古墳群の二子山古墳は使
主の墓ではないかと言われている。)と
地位争いをして倒された“小杵”(おき)
の本拠地がこの地域であったとの説も
あり、古代史的にも重要な場所となって
いる。多摩川下流沿岸は、地理的に武蔵
野台地の縁辺にあたり、その斜面を利用して造られた横穴墓が、古墳時代終末期より奈
良時代にかけて数多く造られた(図33,34参照)。これらは、古墳にかわる墓制として
注目されている。
(3)多摩川の水辺の動植物
自然豊かな多摩川沿岸では上流域から下流域までの全流域に出現する動植物は、平
成9年度から平成14年度の調査で植物917種、魚類61種、底生生物322種、両生類9種、
爬虫類8種、哺乳類13種、陸上昆虫1165種、鳥類119種である。
このうち魚類は河口から20kmまでスズキやマハゼなど、汽水・海水魚が多く見られ、
純淡水魚は主に10kmから上流側でオイカワ、ウグイなどが確認されている。また、海
と河川の間を行き来する回遊魚であるマルタ、アユなども見られる(表1参照)。
このように多摩川流域には多くの自然環境が沿岸の市民と共生し、日々の生活に溶け
込んでいる。
図33 多摩川流域の古墳・横穴墓分布図
23)
図34 多摩川台公園周辺古墳図
(プロアトラス作図加筆)