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図17は、江戸時代に描かれた上野清水堂と
不忍池である。ここに描かれているように、上
野は当時から桜の名所であり、2月末~3月中
頃まで吉野桜、山桜、八重桜を楽しめた。とこ
ろが寛永寺が山内にあったことから規制が厳し
く、堅苦しい雰囲気を嫌った若者は隅田川や王
子の飛鳥山へ好んで出かけたようである。清水
の舞台を模した清水堂からは本郷台地の大名屋
敷が一望できたらしい。
図17と写真12(現在の不忍池の写真)と比
較しても、池のほとりの景色は江戸時代も今も
意外にも変わっていないと感じる。江戸時代に
生きた先人とほとんど変わらない風景を我々も
見ていると思うと不思議な気分になる。
ここ不忍池から忍坂を上がり、上野公園を通
って、上野駅公園口に到着したところで上野界
隈の散策を終わりにする。
3-2 渋谷
昼夜問わず多くの人でにぎわう渋谷は、台地の中を流れる2つの河川が谷を刻み、そ
れらが合流したY字状の谷地形をなす(図18)。北西の代々木八幡から流れてくる川は
宇田川で、井の頭通りと並行して代々木公園の西側~東急ハンズの南側を通って西武デ
パートA館、B館の間を抜けている。北東の新宿御苑から流れてくる川は渋谷川で、ほ
ぼ明治通りと並行に渋谷駅の東側を流れている。
2つの川は暗
あんきょ
渠(地下トンネル)を通っているために、地上ではもはや川の存在を実
図17 江戸の不忍池
14)
写真12 池之端側から見た不忍池
対岸は上野の森(上野台)、かつては谷田川(旧石神井川)が流れ込んだ
上野駅の方角
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