27 ③千束池(浅草、下谷周辺、 図30) 隅田川西側の当時の浅草区 や下谷区であった低地には、 現在の浅草公園の西側から吉 原にかけて「千束池」と呼ば れる巨大な沼地があった。こ の沼地は深さが20m以上も ある深いものであったとの推 定もあり、浅草区北部や下谷 区北部での地震・揺れの大き い地域に関連していると思わ れる。現在、台東区千束はこ の沼地のほぼ中央に位置し、かつての沼の名称を継承し た町名となっている。下町低地と言っても、形成過程で の条件の違いによって地域ごとに揺れ方が大きく違い、 関東地震の際に明暗を分けている。本章で紹介したかつ ての沼地のうち千束池以外はいずれも洪積台地を開析し た比較的狭い谷部に位置し、台地のため下町低地と比べ れば震度は低いと考えられる地域である。しかし、地震 の被害が懸念される地域も埋め立てられ、都市化により 地形が改変されてしまい、一見安全と見られている場所 でも地震時の液状化被害の可能性が潜在していると考え られる。沼、池、旧河道の埋立地は、関東地震だけでな く安政江戸地震等でも被災している箇所が多く、繰り返 して被害が発生していることが確認されている。 写真28 港区一の橋付近 写真29 港区の弁慶堀 写真30 神田川の小石川橋付近 図28 芝公園周辺の町丁目 ごとの震度分布 22) 旧溜池 旧古川池 渋谷川 図30 下町低地の町丁目 ごとの震度分布 22) 旧千束池 図29 皇居周辺の町丁目 ごとの震度分布 22) 日本橋川 旧大池 和田倉門 神田川