14 2-3 自然環境 隅田川は首都東京の真ん中を流れる河川であり、日本の高度経済成長期“公害”と呼 ばれた環境汚染の影響を大きく受けた河川のひとつである。昨今では、多摩川や内陸部 の河川では、利水や防災のため、完全に自然の状態に戻すことはできてはいないものの、 かつて生存していた生き物が復活したり、BOD(生物化学的酸素要求量)の値が前年 より更に改善されたなどの話題が多い。 隅田川についても、その水質が気になるところであるが、隅田川の地形的な特徴とし て水質面で不利な条件があるようである。すなわち、隅田川はほとんど勾配がなく、全河 川が潮の干満の影響を受けやすい感潮域となっており海水の遡上の影響をうけること、屈 曲部も多いことから河川水が滞留しやすい特徴がある。また、流域には隅田川に排水する 水再生センターや浄化センターが3箇所(平成18年現在)あり、河川水に占める下水処理 水の割合が高いことなどがあげられる。河川の水質は下水処理水の影響を強く受け、全窒 素の濃度が高いことが特徴であり(表2)、溶存酸素量が少なくなっているようである。 しかし、下水道の普及と利根川導水路事業による浄化用水の流入等により、現状では BODが5mg/L程度を推移するまでに改善されてきている(1章図7)。 隅田川の水質は両国花火大会や早慶レガッタが中止された昭和36年当時のBODの値 は37.8mg/Lで あ り、 生 き 物 が棲めない「死の川」と呼ば れた時代もあったが、現在で は水質が改善され、イベント の復活し、水上バスも行き来 するなど生活の場の一部にな っている。 平成9年度より水質はD類 型から水道3級、水産2級の C類型(表2)へと、次第に 改善されてきている。一方、 大雨時には底泥の巻き上げに よる有機物の拡散が、微生物 を大量発生させ、酸素を消費 させてしまうためと考えられ る魚の浮上事故が発生してお り、更なる水環境の向上が望 まれている。 項目 類型 利用目的の 適応性 基準値 水素イオン 濃度 (pH) 生物化学的 酸素要求量 (BOD) 浮遊物質量 (SS) 溶存酸素量 (DO) 大腸菌群数 AA 自然環境保全及 びA以下の欄に 掲げるもの 6. 5以上 8. 5以下 1mg/ℓ以下 25mg/ℓ以下 7.5mg/ℓ以上 50MPN /100mℓ以下 A 水溶及びB以下の 欄に掲げるもの 6. 5以上 8. 5以下 2mg/ℓ以下 25mg/ℓ以下 7.5mg/ℓ以上 1,000MPN /100mℓ以下 B 及びC以下の欄 に掲げるもの 6. 5以上 8. 5以下 3mg/ℓ以下 25mg/ℓ以下 5mg/ℓ以上 5,000MPN /100mℓ以下 C 工業用水1級及 びD以下の欄に 掲げるもの 6. 5以上 8. 5以下 5mg/ℓ以下 25mg/ℓ以下 5mg/ℓ以上 D 工業用水2級 農業用水及びEの 欄に掲げるもの 6. 0以上 8. 5以下 8mg/ℓ以下 100mg/ℓ以下 2mg/ℓ以上 E 工業用水3級 環 境 保 全 6. 0以上 8. 5以下 10mg/ℓ以下 ごみ等の浮 遊が認めら れないこと 2mg/ℓ以上 備考 1. 基準値は、日間平均値とする(湖沼、海域もこれに準ずる。)。 (注)1 自然環境保全:自然探勝等の環境保全 2 水 道 1級:ろ過等による簡易な浄水操作を行うもの 〃  2級:沈殿ろ過等による通常の浄水操作を行うもの 〃  3級:前処理等を伴う高度の浄水操作を行うもの 3 水 産 1級:ヤマメ、イワナ等貧腐水性水域の水産生物用並びに水産2級及び水産3級の水産生物用 〃  2級:サケ科魚類及びアユ等貧腐水性水域の水産生物用及び水産3級の水産生物用 〃  3級:コイ、フナ等、β-中腐水性水域の水産生物用 4 工業用水1級:沈殿等による通常の浄水操作を行うもの 〃  2級:薬品注入等による高度の浄水操作を行うもの 〃  3級:特殊の浄水操作を行うもの 5 環 境 保 全 :国民の日常生活(沿岸の遊歩等を含む。)において不快感を生じない限度 表2 河川水質環境基準(参考) 1)