45 6-3 親水を踏まえた隅田川の将来像 隅田川は古くから人々に親しまれて きた「水の都」東京を象徴する河川で あり、人々が集う魅力ある水辺空間と して、「隅田川を中心にいきいきとし た、うるおいのあるまちづくり」を目 指して、今後も引き続き緩傾斜堤防や スーパー堤防等により、親水空間化と 堤防の安全性を向上させ、周辺市街地 と一体的な整備の継続が必要である。 かつてはコンクリートの直立護岸ば かりだった隅田川も、桜橋のたもと、 箱崎、大川端に造られたスーパー堤防や耐震性を備えたテラス護岸(整備率86%)など、 安全で親水性や景観に配慮した整備が積極的に進められている。これまでのような川に 背を向けた街並みから、川に顔を向けたまちづくりを目指している(写真45)。 こうした取り組みにあわせて、東京都は、隅田川や運河など水辺空間の魅力を高め、 都市の賑わいを目指し、「観光施策連携推進会議」を設置し、さらに地元と連携し、早 慶レガッタや花火大会の再開に象徴されるように、防潮堤をギャラリーや吾妻橋付近の オープンカフェ、水上ステージとして活用するなど、住民や観光客が憩い、にぎわう場 となることも積極的に考えている。 また、平成23年(2011)には世界一の高さを誇る新東京タワーの完成に伴い、隅田 川もさらに活性化し、より多くの人々が集まる地域を目指している。 これからの隅田川は、東京都民の“母なる川”として、東京の親水河川の中心的存在 として益々に発展していくに違いないと考える。 かつて深川の大川端に住居を構え、 こよなく隅田川を愛し続け、“古池や かわづ飛び込むみずの音”と詠った松 尾芭蕉は、このように変貌をとげた現 在 の 隅 田 川 を 眺 め な が ら( 写 真46)、 隅田川の未来について、いったいどん な唄を詠んでいるのだろうか……。 写真45  隅田川のテラス護岸 写真46 隅田川河畔から清洲橋を眺める芭蕉