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最近、科学ものとして人気のあるテレビ番組で、東京湾海底のヘドロ化の急激な進行
が相次いでとりあげられた。
これは生活排水に含まれる高有機リンな
どによって、異常発生したプランクトンが
満潮時に干潟などに運ばれても、アサリな
どのえさとして除去されず、人工浜の閉鎖
的な護岸化した海底に有機物の固まりとし
て沈降・堆積することに起因しているとい
う。
この現象は東京湾のような閉鎖的な内湾
でよく発生し、浅い海水層と深い海水層の
上下層の混合が起こりにくくなることで、
プランクトンなどの死骸が堆積し、その分
解のために酸素が消費され、貧酸素水塊が海底付近に発生するメカニズムである。さら
には、貧酸素でも代謝を行う嫌気性細菌が、プランクトンの死骸に含有する硫黄分など
を還元しヘドロ中で硫化物イオンを生成すること
から、硫化水素特有の卵の腐ったような臭気を放
つ影響が生じる。
ヘドロの分布で貧酸素状態になった範囲では、
底生動物の生態系に変化がみられた。現在ではあ
さりに変わる貝種として、船のバラスト水と共に
外国から入ってきたホンビノスガイなどの外来種
が増殖し、生態系の破壊問題も指摘されている。
東京湾は昔から江戸前と呼ばれて多くの寿司ネ
タを提供してきたが(写真6)、最近ではその魚介
類が激減しており、今や東京湾で調達できる寿司
ネタはほとんどなくなっているという。
特に江戸前を代表するシャコやアナゴなど海底
にすむ生き物の漁獲量が最近、大幅に減少してい
る。その原因としてさまざまなことが考えられているが、漁業関係者や研究者たちが注
目しているのが上記の「貧酸素水塊」といわれている。
生活排水が原因として紹介されているが、何か打つ手があれば環境破壊に対する防護
策を小さなところから実践してゆきたいものである。
写真6 最盛期の東京内湾海苔漁場
20)
図26 貧酸素水塊の分布 (H20.7.29)
19)
<低層の溶存酸素分布>