34 6.東京の鉄道 日本の都市は、世界的に見ても鉄道網が発達していると言われている。とりわけ東京 は、一国の首都として明治時代から鉄道網の整備が積極的に推進され、単なる旅客の移 動や物流の手段という輸送機関としての本来の目的のみにとどまらず、都市の骨格形成 や街づくり、人々のライフスタイルなどにも大きな影響を及ぼして今日に至っている。 首都東京の発展は、鉄道の存在なくしてあり得なかったと称しても過言ではない 26) もしこの東京に鉄道がなかったならば、いったいどうなっていただろうか。道路には 自動車やバイク、自転車が溢れ、慢性的な交通渋滞と排気ガスによって、深刻な環境汚 染がもたらされていただろうことは想像に難くない。また、交通事故による犠牲者も、 今以上に増加していたであろう。現に、都市鉄道の整備が遅れている東南アジアの大都 市などでは、道路に溢れる自動車やバイクによる大気汚染が深刻化しており、ようやく 近年になって日本などの支援によって鉄道網の整備が開始されているのが現状である 27) 過去の技術ノートでは、東京の地下鉄(No.8号)、山手線(No.15号)、首都圏を支え る鉄道網(No.30号)、大江戸線(No.34号)で東京の鉄道を特集した。今回はこれらの 各号を再度、東京の鉄道(主に地上部)と地下鉄について、歴史的変遷および地盤との 関わりをまとめ、整理してみた。詳細については各号を参照して頂きたい。 6-1 首都圏における鉄道のあゆみ(No.30号:首都圏を支える鉄道網に掲載) (1)新橋~横浜間の鉄道と西洋土木技術 わが国最初の公共輸送を目的とした鉄道が開通したのは明治5年(1872)のことであった。 この新橋~横浜間の鉄道建設は、イギリス人技師を中心とする外国人技師の指導により行 われ、最盛期には百数十名の様々な職種の外国人が来日した。そして、本格的な海中築堤 による土木工事となった高輪付近や神奈川付近の埋め立てなどが行われたが、日本側の最 写真23 東京駅丸の内口の駅舎 駅舎にはホテルもあり、大正3年に完成した我が 国の鉄道駅の拠点。現在屋根を中心にして改装工 事中。国の重要文化財に指定(2003年5月)。 写真24 東京駅中央線1番線にある 0kmポスト