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4.これからの下町
東京の下町は、町民文化であり、江戸時代から連綿として受け継がれてきた落語等の
各種興業、伝統工芸、食文化等国内だけでなく海外にまで誇れるような伝統文化がたく
さんある。これからの下町に望まれていることは、後述のような防災をしっかりと実践
し住民の生活をまもり、さらに伝統文化を受け継いでいくことである。
4-1 防災の観点からの下町の状況
東京の下町は、江戸時代の浅海部埋立に始
まり、現在に至るまで、干拓、埋立により拡
幅されてきた。
その範囲は、右図のとおりで、下町の南側
から東京港にかけてはそのほとんどが埋立て
である。埋立ては、江戸時代からゴミの処分
を兼ねて行われ、特に数十回にも及ぶ江戸大
火の瓦礫も使用された。
<軟弱な地盤と地震災害>
東京低地の地盤は、沖積層の軟弱地盤であ
る。軟弱地盤とは、建造物の基礎地盤として
十分な地耐力がない地盤で、粘性土・シルト・
有機質土・緩い砂質土などで構成されている。
このため、地震時の揺れが大きい。右図の
関東大震災の震度分布をみると下町で震度の
高い地域が面的に広がっている。下町の中で
も隅田川を挟んで東側は総じて震度が高く、
西側が比較的低い。沖積地盤と埋立て地で震
度6以上の地震が発生している。
また、地盤の液状化の問題では、地下水位
が高いことも一つの要因となっている。
液状化は、砂地盤において、地下水位が高
い場合に起り易い。水が存在する緩い砂層が
地震でゆすられることにより砂粒子が詰まっ
てしまった砂層に変わる過程で砂層がまるで
液体のようなふるまいをおこす。
実際には、液状化により建物の傾き、倒壊
あるいは構造物の破損等が起きやすくなる。 図7 関東大震災 東京都心部の震度分布
30)
図6 東京港の埋立ての竣工時期及び分類
29)