25 4.これからの下町 東京の下町は、町民文化であり、江戸時代から連綿として受け継がれてきた落語等の 各種興業、伝統工芸、食文化等国内だけでなく海外にまで誇れるような伝統文化がたく さんある。これからの下町に望まれていることは、後述のような防災をしっかりと実践 し住民の生活をまもり、さらに伝統文化を受け継いでいくことである。 4-1 防災の観点からの下町の状況 東京の下町は、江戸時代の浅海部埋立に始 まり、現在に至るまで、干拓、埋立により拡 幅されてきた。 その範囲は、右図のとおりで、下町の南側 から東京港にかけてはそのほとんどが埋立て である。埋立ては、江戸時代からゴミの処分 を兼ねて行われ、特に数十回にも及ぶ江戸大 火の瓦礫も使用された。 <軟弱な地盤と地震災害> 東京低地の地盤は、沖積層の軟弱地盤であ る。軟弱地盤とは、建造物の基礎地盤として 十分な地耐力がない地盤で、粘性土・シルト・ 有機質土・緩い砂質土などで構成されている。 このため、地震時の揺れが大きい。右図の 関東大震災の震度分布をみると下町で震度の 高い地域が面的に広がっている。下町の中で も隅田川を挟んで東側は総じて震度が高く、 西側が比較的低い。沖積地盤と埋立て地で震 度6以上の地震が発生している。 また、地盤の液状化の問題では、地下水位 が高いことも一つの要因となっている。 液状化は、砂地盤において、地下水位が高 い場合に起り易い。水が存在する緩い砂層が 地震でゆすられることにより砂粒子が詰まっ てしまった砂層に変わる過程で砂層がまるで 液体のようなふるまいをおこす。 実際には、液状化により建物の傾き、倒壊 あるいは構造物の破損等が起きやすくなる。 図7 関東大震災 東京都心部の震度分布 30) 図6 東京港の埋立ての竣工時期及び分類 29)