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大深さは約30mである。駅躯体の基礎底面下には東京礫層と江戸川砂層が分布し、建設
開始時点の地下水位はGL-38m程度であった。ところが、地下水汲み上げ規制後の回復
上昇に伴い駅付近の地下水位は開業時にGL-18m、1994年にはGL-14mにまで急上昇し、
躯体が浮き上がる可能性が生じたため、3.7万トンもの鉄塊等をカウンターウェイトと
してホーム下と下床版の空間に設置する対策工が施された。しかしながらその後も地下
水の回復は止まず、2003年にはGL-12m近くまで上昇したため、第2次対策として、永
久グランドアンカーによる下床版の固定が行われ、GL-7.5mまでの水位上昇に耐えうる
構造に改修された。現在は、東京都などの観測データを参考にGL-5.0mを一応の最終的
な地下水位と仮定し、対策を地下水位の変動に応じて段階的に施工することで最終水位
に対応可能な全体補修計画を策定している。
なお、第2次対策として行われた永久グランドアンカーによる下床版の固定工は、高
被圧水下におけるアンカー止水システムの先駆けであり、その後の総武快速線東京地下
駅における躯体浮き上がり対策にも採用され威力を発揮している。
総武快速線の両国~東京駅間を結ぶ総武トンネルでは漏水対策が行われている。総武
トンネルは1965 ~ 1972年に建設された並列の単線シールドである。建設時は地下水位
がトンネル下部に位置していたことから、二次覆工を省略して供用が開始された。供用
開始後、地下水汲み上げ規制に伴いトンネル天端まで地下水位が回復したため、1970
年代後半からトンネル内部への漏水、レール腐食、鉄筋腐食などが発生し始めた。対策
として、注入による止水工や集
水桶の設置などが行われたが、
この程度の対策工では決定打
とはならず、他の部材への腐食
の進行も認められたことから、
恒久的対策として二次覆工が
施され現在に至っている。
<新しい取り組み>引用
東京都では、鉄道トンネルや
建築物の地下室に漏洩してく
る地下水の取り扱いについて
1983年に「地下構造物への漏洩地下水の取り扱い指導指針」を制定している(1999年
に一部緩和改訂)。この指針では、漏洩してくる地下水はその清濁に関わらず基本的に
は下水道に接続し放流しなければならないとしている。下水道に放流するためには下水
道処理費を請求されることになり地下施設所有者にとって大きな経済的負担となってい
る。このような状況の中、下水道処理費の軽減を模索する鉄道事業者と清浄な水を必要
図25 総武トンネルにおける漏水被害
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