- 19 - 4-2 防潮堤の役割、変遷、構造 防潮堤の役割は、波浪や高潮、津波などにより、陸域へ海水が侵入することを防止す ることにあります。 不規則な波浪が防潮堤に打ち上げる際の水位は変動が大きいため、防潮堤を設計する場 合、最大波を防ぐことを前提として設計すると、極めて大きな防潮堤を造らなければなり ません。そのため、防潮堤を設計する際には、想定される最大波ではなく、有義波と呼ば れる波の諸元が利用されています。有義波は、不規則な波群のうち、波高の高い方から順 に並べなおして高い方から3分の1の個数の波を平均した値のことです(図19)。不規則 な波群の個々の波の7波に1波程度は有義波高を超える高さとなります。したがって、有 義波に対して設計した防潮堤は、ある確率で波が堤防を越えることを前提としています。 越波に対して耐えうる構造を有する必要があるという観点から、防潮堤は海側・天端・ 陸側の三面をコンクリート板で被覆する、三面張りの構造とするのが標準とされていま す。三面張り構造は、昭和28年(1953)に台風13号が上陸した際、破壊された盛土堤 の防潮堤を復旧するために採用されたものです。その後、昭和34年(1959)の伊勢湾 台風の際に、三面張りの防潮堤には被害を抑える効果があることが確認され、現在の防 潮堤の構造の標準となっています。三面張り構造は、堤防の高さを現実的な高さに抑え つつ、ある程度の越波であれば堤防の破壊を防ぐという考え方に基づいています。 3.0 (n) 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 ある地点で観測された波高 (不規則に変化しています) 波高の大きい 順に並び替え します 3.0 (n) 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 有義波高 波高の大きい ほうから1/3の 平均値 図 19 有義波の定義 17) また、近年は海岸保全についても考慮されるようになってきました。海岸保全の考え 方は、1980年頃までは海岸の陸側境界に堤防・護岸を設置して陸域を防護するいわゆ る「線的防護」が主体でした。しかし、海岸侵食問題が深刻化するにつれて、海岸線か ら海側にある程度の距離をおいて設置する離岸堤などの施工が増加し、複数の施設を組 みわせて波や流れと海浜変形を制御するいわゆる「面的防護」に主力が移りました。さ