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1.はじめに
今回の技術ノート第51号は、「東京都の津波・高潮対策」を紹介します。技術ノートでは、
これまでに「東京湾」(第37号、H16.11)、「東京の防災」(第24号、 H9.9)、「東京の低地」
(第21号、 H8.3)、などで東京都における高潮災害及び対策について紹介してきました
が、すでに14年経過しており、情報としては古くなってきました。また、東京都では、
平成23年(2011)3月に発生した東日本大震災を踏まえ、これまで取りまとめていた
「東京湾沿岸海岸保全基本計画」を変更しています。技術ノート第51号では、新しい情
報を加えて、東京湾沿岸の海岸保全施設の津波・高潮・耐震対策について紹介します。
1-1 津波・高潮とは
(1)津波とは
「津波」とは、海底の急激な地形の変化により海面が盛り上がる現象です。地震が起
きると、震源付近では地面が持ち上げられたり、押し下げられたりします。地震が海域
で発生し、震源が海底下の浅いところにあると、海底面の上下の変化は、海底から海面
までの海水全体を動かし、海面も上下に変化します。このようにもたらされた海水の変
化が周りに波として広がっていく現象のことを津波といいます(図1参照)。
津波の伝播速度は海の深さによって決まり、V=3.6√g・h (ここにV:津波の伝播速度
(時速)km/h、g:重力加速度9.8m/s
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、h:海の深さm)で表されます。この式から津
波の伝播速度Vと海の深さhの関係を求めると、図2のようになります。津波の伝播速度
Vは、海の深いところではジェット機なみの速さとなります。
また、チリ地震が起こした津波が日本を襲った例もあり、津波は遠くからやってくる
ことがあり、要注意です。
図1 津波の発生メカニズム
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図 2 津波の伝播速度
波浪は風によって生じる海面付近の現象で、波長(波の山から山、または谷から谷の
長さ)は数メートル~数百メートル程度です。一方、津波の波長は、数キロから数百キ
ロメートルと非常に長い波であるため、勢いが衰えずに連続して厚い壁のように押し寄
せます。しかも、浅い海岸付近に来ると波の高さが急激に高くなる特徴があります。津